15.House NI 裏とオモテと境界

House NI 裏とオモテと境界

所在地 :愛知県知立市
 「長年住み続けた家を建て替える」というお題に、「改修して住み続ける」という解答を建築家が示した。
 昭和時代に建てられた立派な小屋組みを持つ丈三建ちの平屋のポテンシャルを掘り起こし、余分な形態をそぎ落して、明るさと強さ、快適性が加えられた。さらに既存不適格となった建物配置を是正するために曵家し、基礎土台の補強を行なうために揚家するという手間をかけ、昔の風情を残しながら現代住宅として再編・再生するという手法が巧みである。施主の希望を丁寧に読み解いた計画であり、施工者の尽力によって、その手法が有意義で可能性があることを実証したものであった。
 4メートルをこえる桁高さを利用して、通常の高さに水平スラブを挿入することで、その上部は開放された一体的な屋根裏スペースとなり、その下部はダブルルーフ下のように守られたプライベートスペースとして分割される。もはや裏ではない上のスペースは、通風も確保されており、縁側にねころんでいたくなるような居心地が感じられる。そこは、住み繋ぐ記憶と木造在来の持つ素朴な力強さを兼ね備えた「梁現し」という施主の希望通りのダイナミックな空間である。それに対し、スラブ下の生活空間領域は対称的に若干閉塞気味な個室重視の空間である。中心のリビングスペースも南側に玄関があって直接庭に面していない為、視線は自ずと見上げるように促されるのである。
 開放的な屋根裏、内向的な生活領域という明確な空間の図式のうえに、少しずつ住人の手によるインテリア装飾や庭造りがつけ加え始められているようであった。また、これからますます市街化が進む周辺との関係にどのように折合いをつけてゆくのかというところも気になる。住み繋いだ家をこれからどのように住みこんでゆくのか今後の変化が楽しみなところである。
(加茂 紀和子)
主要用途 一戸建ての住宅
構  造
木造
階  数 地上2階
敷地面積
443.56u
建築面積
103.33u
延床面積
132.32u
設計者  1-1 Architects
施工者  平田建築株式会社

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