金沢工業大学・国際高等専門学校 白山麓キャンパス所在地 :石川県白山市瀬戸辰3−1 |
山間の宿泊施設及び隣接の広大な土地に、国際高等教育機関の場を全く新たに整備するプロジェクトとなっている。学校としては過疎地に対する刺激要素としてとらえているようであるが、豪雪過疎地の中でどのような一年間が過ごされるのか興味深い。 既存施設をコンバージョンしながら、新規にプロットされた施設群は、教育の場としての校舎及び体育館、生活の場としての学生寮、地域にも開放された温泉施設の異なる要素で構成されている。都市部のような利便性のない立地における国際専門高校なので、トータルに生活をサポートするためにオンとオフの場が必要なのは当然だが、学生の欲する刺激の補完を考慮すれば周辺の地域社会もキャンパスの一部であると考えていくことも必要なのかもしれない。 設計にあたっては、入学する学生たちの意見を聞くこともできないので、学校としての経験やリサーチに基づいたプログラムが重要になる。日本的な教育方針と違って、生徒自身による自律的なコミュニケーションなどを重視する姿勢が、均質でないプランやダイナミックな空間の創造につながっている。 最もユニークなのは校舎棟で、プランはクレセント状で既存棟との間に大きな中庭(運動場)を抱え込んでキャンパスに大きな動きをつくり出すことに成功している。内部はフリースペースも多く、ゆとりを感じさせる。鉄骨(耐火塗料)と大断面集成材(燃え代)によるハイブリッドな架構は圧巻である。 学生寮は外部からのプライバシーを確保しつつ囲われた外部空間をつくるように配置されている。落雪時の音にも配慮した豪雪地ならではの造形である。 体育館は地域に向けた開放にふさわしい位置に配されているが、地域が受け入れていくことができるようになるには少し時間がかかるようである。 温泉施設は古民家を活かしたもので、外国から来た学生にも地域住民にも親しみやすいものになっている。地域との濃密な接点になることを期待する。 |
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(関 邦則) | ||||||||||||||||||||
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