多治見市火葬場 華立やすらぎの杜所在地 :岐阜県多治見市大薮町字上迫間洞249 |
建設地はゴルフ銀座と呼ばれるほどの丘陵地で、豊かな森に囲まれ、その存在に厳しい目が向けられる「火葬場」のような施設には、立地として適した環境である。迫間洞の地名からもわかる様に、近くに交通量の多い主要地方道路に接しているにも関わらず、一歩入り込んだ静寂の中で故人との別れの場となる家族にとってより自然な形で安らぎや親しみが感じられる「家」の様な佇まいを意図している。 この環境の中に、その森に伏せる様な3次元曲面の大屋根がこの建物の最大の特徴である。 日本古来の寺院建築の大屋根は、重量感を強調しているのに比べ、緩やかな勾配屋根と深い庇で水平性を強調することで、建物高を低く見せ威圧感をなくしている。北側、池に沿った円弧上のガラス面は統一され「癒しの顔」を見せているが、人々を迎え入れる「正面の顔」は、3次元曲面故に複雑な形態になるのは致し方ないと思う。反面、躍動感、開放感のある大胆なデザインとなり、それなりに面白いと思う。 屋根材としては、縦葺金属屋根で瓦棒部分を本瓦とする事で日本古来の瓦屋根の質感を持たせ、焼物のまち「多治見」らしさを表現している。この大屋根を支えるキールトラスを採用した架構は、開放的な無柱空間を生み、またハイサイドからの自然光、自然通風により、遺族や会葬者の重苦しい気分をとき放つことができる。キールトラスを魚の背骨に見立てた時、それから外に伸びているあばら骨のようなH型鋼材は、下フランジを天井面に露出させている。大きなガラスを通し、外側の軒先まで連続させたシンプルな天井面は、軸組を魅力ある意匠的アクセントとしている。 あばら骨を端部で支える柱は、鉛直荷重のみを負担する細柱となり、待合ロビーからガラス越しに修景池を望む時、里山の風景の目障りにならず、外部空間の一体感がうまくいっている。 内部空間の演出、豊富な蓄積された知識による設計ディテール等、全体として大いに工夫され評価できる。ただ一つ、来訪者が敷地に進入する時、最初に訪れる駐車場に、空調置場等のサービス空間が目に留まるのが気になった。 |
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(山田 貴明) | ||||||||||||||||||||
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