北方町庁舎所在地 :岐阜県本巣郡北方町長谷川1−1 |
どこの都市においても、庁舎建築は住民にとってシンボル的な存在として受け止められているのではないかと思う。そのシンボル性は、先進事例を参考にしながら、さらに豪華に、さらに大きく(高層に)といった発想や方法によって実現されていくことが多い。 当該応募作品は、そうした庁舎“らしい”建築の延長線上には位置していない。いわゆる“らしくない”建築というのが第一印象である。小さな町の小さな庁舎であるが故に、既定の庁舎建築タイプに拘束されない庁舎のイメージを実現することが可能だったのだろうか。この庁舎の設計にあたっては、庁舎建築を模索するところからスタートしておらず、むしろ新しい地域のシンボル的な存在を追求するところからスタートしているのだろうと感じた。寺院の屋根や合掌づくりの民家にも通じる大屋根のような形状をモチーフとした建築イメージは、庁舎という機能を消し去ったとしても存在を主張できる強くてわかりやすいシンボル性を感じさせる。 外観は穴(切込み)だらけの傾斜屋根が乗った巨大な住宅といった形状で、支柱のない深い軒下空間がとても開放的で魅力的な印象を受けた。屋根形状よりも、むしろ軒下空間のほうが日本の建築の特徴を作り出しているのかもしれないと感じるほどであった。1階の北面、南面はガラスになっており、部分的に全開口できるので、縁側的な中間域としての軒下空間の存在によって、外部空間とのつながりが心地よく、利用しやすいものとなっている。 上階においても開口が散りばめられており、採光や通風がとられていることから、住宅感覚を体感することができ、エコにもつながっている。吹抜の配置や空間構成に伴うスケール感も良く、屋根面内側の傾斜壁もボックス型の建築にはない魅力として受け止められている。 追随されることのないユニークさに輝く建築であると思う。 |
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(関 邦則) | ||||||||||||||||||||
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