松阪市子ども発達総合支援センター
所在地 :三重県松阪市下村町875−1 |
松阪市郊外の山裾に位置する、心身の発達に遅れや心配のある子どもとその家族が、日常的に通いながら支援を受けるための施設である。およそ2,300uの木造平屋建ての施設は、子どもの年齢に応じたいくつかのゾーンに分けられ、大小の中庭を囲みながら、要所にラウンジを設けた幅の広い廊下により繋がれている。施設の性格上、諸室の機能や構成は固定的であり、また敷地外周に対しては閉鎖的な構えとなっているが、中庭とセットで段階的に構成されたゆとりのある動線空間により、十分な開放感と空間の多様性が担保されている。 各ゾーンは、住宅スケールのボリュームに分節された部屋の集まるクラスターとして構成され、各ボリュームは地場産の小断面規格材を用いた在来工法により架構される。目を引くのは、施設全体で30数室ある諸室の壁仕上げや天井の形状が、ことごとく異なったものとしてデザインされている点である。ある種の発達障害をもつ人の暮らす環境の整備にあたっては、行為とそれを行う空間とが分かりやすく関連付けられること=「空間の構造化」が重要とされている。ここではその考えの元、空間の仕上げや形状を変化させることで各室の区別を容易にし、そこで行われる行為との対応を認識しやすくすることが企図されている。「空間の構造化」は、一般には室内の間仕切り等で行われることが多く、建築スケールにおいてここまで意識的にデザインされることは、管見の限り稀である。ぜひ今後の利用を通じて、その有効性の検証を行っていただければと思う。 このような施設こそむしろ町中にあってほしいという立地の不満、また室構成とディテールの中間にもう少し細やかな配慮がありえたのではないかとの若干の疑問は残る。しかしながら、このような社会的意義の高い企画を行った発注者、それに密度の高いデザインと施工で応えた設計者・施工者らにより実現した、意欲的な公共建築である。 |
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(柳沢 究) | ||||||||||||||||||||
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