こじまこども園所在地 :愛知県豊田市金谷町7−30 |
計画地は豊田市旧来の農業中心地にあり、近年住宅地として高密化・人口増の趨勢の中、整形・平坦な大画地で周辺施設群とも連携できる好環境に恵まれる。広々とした敷地にのびのび格調高いシンメトリー配棟と豊かな外部空間が存分に展開され、地域の誇る「こども園」となっている。 建築主の高い理想追求と長年の実践蓄積がそれを可能とした原動力であることが、現地に立って改めて実感された。「循環と再生」の大きなテーマのもと、子どもたちを育み次代や地域社会に繋ぐ環境づくりはもとより、木造園舎の木材調達・製材やリサイクル可能な高機能チタン瓦の開発・採用の自製化に至る懐の大きさも特筆したい。 建築計画は実にカチッとして端正である。配置・平面計画では南北中心軸対称に、30mスクエアの芝生広場に深いピロティ回廊を巡らせ、2.5m(一部±α)グリッド上に規則正しく均一な保育室群がコの字型に囲む構成で、断面は大らかな勾配梁の木架構に光や風が遊ぶデザインに統一される。背丈も能力も差異がある0歳児〜5歳児にとって同一空間体験の適否が気になったが、各々の居住域設え配慮などでフォローアップされている。 30mスクエアの外部空間が幼児にはいかにも過大かとの懸念は、各齢相応の闊達を自然結集した集団行動を目の当たりにしてすっかり払拭された。さらに芝生広場から渡り廊下をスルーした南面前庭の「ミニタウン」では、小さな丘や草木・池や畑を自在に擁した柔らかな地域開放感の中で、園児たちは「はだしの生活」を逞しく謳歌する。 きめ細かな設計監理と超タイトな工程管理においても、建築主・設計者・施工者のノウハウと努力の結集が感じ取れた。総合図による相互確認が徹底され、既存解体を含めて丸1年(改築実体は9ヶ月)の難工期の中で前述の施主支給資材2件が絶大な突破力となった。いずれ、プロセスでの諸苦労を感じさせない堂々の社会資産である。 |
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(鈴木 利明) | ||||||||||||||||||||
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