新城市立作手小学校・
所在地 :愛知県新城市作手高里縄手上32 他 |
愛知県東部内陸の新城市のうちでも作手地区は、山懐に抱かれ歴史と文化が香る自然環境が息づく。地元の待望久しい統合小学校+地域交流館のこの複合文化施設は、設計初期から数年かけてみんなで考え活動して想いを育んできた、大人と子どもの「共育の場」であるという。 迎える外観の佇まいは確かに、周辺の山並みに馴染む切妻屋根の連棟と高さを揃えた深い軒先や、黒い勾配屋根と木の鼻隠し・外壁が高感度であり、道路対面の支所庁舎とのさりげない統一感もいい。ただ第一印象として、交流館ホール部分の淡色の箱状マッスと校地を結界する立派な正門棟とにはやや異質感が残った。 グラウンドをアクセス・日照・寒風除けに好適な南東に纏め、程よいスケールの中庭を囲んで2つの機能の分化と相互乗入れを図った配置計画は絶妙で、運営上の好首尾と意気込みも実感できた。芝張りの整然とした中庭を軽快な列柱の深い回廊空間が巡り短辺正面に夢のある「プリン型」ランチルーム棟でくくる構成は、子どもや地域の多彩なイベント展開の場となるシーンを愉快に想起させる。 構造計画の内部・小屋組みへの随所の木架構演出も場相応の意図を感じて趣き深い。普通教室上部のロングスパンに光と風を取込む傘状の大屋根・特別教室上部のシンプルな木トラスと中廊下上部のS材ハイブリッドの高窓アーケード・体育館梁間に連なる樹木並木状の木柱+方杖…と、木の恩恵に包まれた豊かな内部空間体験が地域と子どもたちを末永く育むことを祈ってやまない。 現地に伺った月曜午後は子どもたちの日常活性に触れたい目論見であったが、折悪しく前週の台風で週末順延となった運動会の代休日と重なって、校内は閑散としていた。それでも、グラウンドに臨む普通教室棟の土間空間に連なるてるてる坊主やテープ止めの応援紙片にその余韻を見て、山間に響く子どもたちの歓声に想いを馳せた。 |
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(鈴木 利明) | ||||||||||||||||||||
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