多米の家所在地 :愛知県豊橋市 |
計画地は豊橋市郊外の、低い山並みに抱かれた農風景の好環境に戸建住宅が建ち並ぶ一画で、私自身の生い立ちにもとても馴染みの場所柄。この地に高感度の木造2階建て・二世帯住宅ができたと知り、楽しみにして現地審査に赴いた。 応募図面等から、場を読んだ明快な3枚おろしの平面計画と楽しげに入り組んだ2階断面計画がとりわけ興味深く感じていた。勾配屋根の町並みの中に渋色カラーベスト葺き外壁の端整な箱体が挿入され、短手・北面入りの左半に偏る大開口が出迎えその幅一杯に長手を貫いて南の陽光に透過される。持出した北面・玄関庇が2階受け木梁の連続リズムを表出し、下階の親世帯と上階の子世帯の導入空間の独自性を分化して小気味よい。 共通の平面構成は、東隣地側が狭幅の収納棚・西隣地側が適度の奥行の個室群で、中央の開放的なリビング空間が日々の家庭生活を繋ぐ。両家族とも多趣味にして自由闊達で、自前調達の棚板レイアウトにもその生活エンジョイ感が如実に溢れ出て愉快である。壁全面の固定収納棚環境の断熱防露対策の図上からの懸念は全く杞憂であった。 さて、2階個室エリアの複雑な断面構成である。ゆったり取った階高を存分に活かして、床下収納や床下設備スペース・開放的なロフト空間多用が類を見ないほどオープンで自在な組合せを呈しており、目下は対面する収納棚と相まって若夫婦のライフスタイルが一瞥できる。近い将来に予定と聞くお子さん2人の個室領域としてどう展開するかが未知数であり、ライフステージ折々の設えの小回り変貌が今後の楽しみでもある。 基盤たる木スケルトンと可変の木インフィルの弁別はきちんと想定された設計内容と理解した。家族とともに成長する住宅本来のドラマの端緒を拝見し、この先5年・10年・・・の適応進化にも注目してみたい。願わくは、今の恵まれた周辺環境の懐に伸び伸び抱かれたままで・・・ | ||||||||||||||||||
(鈴木 利明) | ||||||||||||||||||
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