光洞の家所在地 :愛知県岡崎市 |
計画地は岡崎市市街地の主要幹線道路に南面したやや不整形な土地で、その交通量がもたらす振動と騒音、さらには視環境の制御等を考慮して、住宅としてコンクリート打放し壁に覆われたコンパクトで歪な平面の箱形状を選択した。幹線道路に正対する南面に2層貫通の細い縦スリット一筋、西に回った小幅の斜辺壁左下に小さな長四角の導入穴、脇道に開く東面2階に大きな横長開口…だけが鋭く穿たれた要塞感を醸し出す。 でも、コンクリート壁のテクスチャーは優しい肌合いを希求してラフめの木目を活かすランダム張り型枠積層工法を採用し、柔らかな自然感覚の凹凸が住まいへと誘う。セパ跡や若干の不陸・欠損等の視覚的リカバーにも奏功と見るが、打継ぎやクラック誘発の目地を設けない界面等での不具合補修難は一部気懸りを残した。 南西向きの小穴から入り低くうす暗いアプローチ空間を潜り抜けると一瞬、天空に抜ける小庭が開けて即また暗めの玄関扉へ。これが「洞窟のような 住まい」へのプロローグ…もう1つ天から貫入した中庭を抱き、光と外気が交錯する2層の小宇宙が魅力的に展開する。 図面から感じた窮屈感はすっかり霧散し、内装のコンクリート肌は固くてクールだけれど、とても居心地よい胎内的安寧を体感できた。採光通風や断熱防露への懸念と工夫についても、四季を経てなお支障ない快適性が実証済みだという。(私的には、リビングから北の森の樹冠借景のため一部外壁天端を下げるなど、融通性もありかも?) 現地審査時はとりわけ、施主ご夫婦のこの家にかける情熱と実行力が痛快であった。趣味空間の忌憚ない要請はもとより、得意とする建築金物の細工やインテリア調達、体得したコンクリート打設支援や塗装趣好発揮などの活々した直接参画を得てこそ、設計者・施工者と三位一体のチーム力が結晶した。今後の継承・進化にもぜひ… | ||||||||||||||||||
(鈴木 利明) | ||||||||||||||||||
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