ヒュッテナナナ所在地 :福井県福井市古市3−610 |
両端接道の細長い敷地のほぼ中央に配置され、建物の南側は庭、北側は畑。東西の中心軸を切り妻の棟とし、南北両面の通りに対して裏表なく向けられた透明な切り妻面は、軽やかで重力を感じさせない。住宅ではなく仕事場という半公共空間であることが、この建物の透明性に説得力を与えている。 木造のガラス真壁造りとでも言うべきか、仕上げ材を排除し、空間をつくる要素を空間の形をつくる構造材と屋内外を切り分ける複層ガラスや断熱材+屋根材という性能材料に限定しているが、東西隣地側への深い軒の先に設けられた「御簾」のようなルーバーは、隣家と仕事場とのバッファーをつくるとともに家型を抽象化する。 一見、変哲なくスルーしそうになるが、地面とフラットに仕上げられた基礎天端、床面を85センチ持ち上げる鉄骨の土台と風が通り抜ける床下、建物から分離した屋外機の隠れた存在等、それらのディテールには普通じゃない「普通さ」が仕組まれているのである。 施主がPCにむかって仕事をされている横で、建築家が作品について語り、私は施工者へシビアな現場の苦労を聞き出そうと思って質問をしているところに、時々、施主が日々について教えてくださる。西日対策のため、あらたに軒下に簾を下げたり、緑のカーテン(ヘチマだった思う)を実験中とのことで、そういった付加物が原形に絶妙に馴染んでいた。また、鉄骨土台にわたされた割り竹はなににつかうのですかと尋ねたら近隣をまきこんでの流しそうめん企画用という返答があった。 (詳しくは https://www.facebook.com/hutte77di/) 「ヒュッテ」という軽やかな響きと「ナナナ」とすこし謎めいたリズムのあるネーミングが示す様に、必要最小限の小屋でありながら、日々の時間やめぐる季節を楽しみ、住職近接に加え仕事場を街にコンタクトさせた羨ましいライフスタイルの舞台である。 | ||||||||||||||||||||
(加茂 紀和子) | ||||||||||||||||||||
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