所在地 :愛知県名古屋市中村区名駅3−28−12 |
名古屋駅前ロータリーの正面街区を大らかに受止める端正なシンボル立面として半世紀にわたり親しまれた大名古屋ビルヂングの建替計画として、 駅乗降客や業務・買物客に賑わいと潤いを与える「緑の丘に立つ大樹」をメインコンセプトに掲げて設計された。従前と周辺のスカイラインを継承する街区全体に拡がる低層部と、機能的にシンプルに聳立するスリムな高層部との2段構成とし、5階スカイガーデンの溢れる緑化と本体腰くびれでスマートに切り離して、「大名古屋」玄関口の都市景観形成に大きく貢献している。 「緑の丘」たる低層部は街路空間や屋上庭園の緑化と軽快にデザインされた外部ガラススクリーンで柔らかく包み、そこに立つ「大樹」たる高層部ファサードは出色の2種縦フィンの「1/fゆらぎ」模様で心地よい枝葉を纏う。インテリアの壁天井にも様々にパターン化された根や梢・木漏れ陽や樹冠等のモチーフが随所に散りばめられている。 自然大好き人間としては、大都市駅前のビッグプロジェクトでここまでコンセプトが貫けるのは羨望の限りであるが、何か乾いた人為の見え隠れが少々気になる。造園・植栽の配列や選定がどこか澄まし顔の感があり、身近な内部空間は優しい潤い感が伝わらない。現地でのこんな独白に若手担当者の打てば響く応答が嬉しかったが… 現地で聴取し改めて、コンセプトを共有し実践するためにどれほど膨大な時間と尽力が結集されたか、に想いを馳せる。このビッグプロジェクトは建築主と設計者の意志疎通の直截性、諸難題をクリアする施工者の努力と実力の賜物であり、旧ビルの深いメモリーを(一部具体的にも)継承しながら次の半世紀?にバトンを繋ぐ。今後も末永く、地域環境や駅前景観に清新なインパクトを賦与し続けてほしい。 |
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(鈴木 利明) | ||||||||||||||||||||
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