所在地 :愛知県半田市中村町2−6
 江戸時代中期から、海運業、醸造業で栄えた半田。健康食品志向の機運にも乗り、国内から海外にも、積極的に事業展開を続ける「地場産業の中核を担う企業」その創業の地、一帯に広がる木造建築群の機能・用途再編と、本社棟及び研究開発棟の新築に続く、再整備の核となる企業博物館。木造の旧工場見学施設“酢の里”を、「伝統」「革新」「環境」を標榜し、“免震構造耐火建築物エコ空調システム付帯”に建替…開館約1年にして、来館者10万人突破。船溜まりの引込みを持つ、半田運河沿いに、黒塗下見板張壁が連続する様は、固有の景観であり、この地域の繁栄の歴史を視覚化し、継承。
 この建築は「電通による展示計画が先行。言わば、回遊・体験する企業広告」「竣工後の施設維持管理を設計社と契約」の2点において、一般事例と異なる。建築の企画- 計画- 設計- 施工- 維持管理に渡る仕事の連携及び責任と、最終建築デザインの主導権の所在についての“新しい在り方”か。その故か、ストーリー展示による5つのゾーンが閉鎖的に独立。であればこそ各ゾーンの連結部では、運河周りの景観や中庭に視界が広がり“緊張を解く仕掛け”が欲しい。建築空間の体験の振幅は、乏しく単調だ。建物外周は黒、既設の木造黒塗下見板張壁にシンクロする金属板張、中庭側は、一転、水盤と白のモダンデザイン、最終展示室ゾーン5の光の庭に続く明るさ、新旧が鮮やかに意識化。山車祭りの時には、ここへ山車が入り、練りまわる。各種イベント時に駐車場側を解放。JR半田駅から続く、殺風景な幹線道路に長く面するこの駐車場の位置は、乏しい沿道緑化、中庭との関係とエントランスの解りにくさとも関連して疑問。
 しかしながら、この新旧建築群は、次世代に向けた“地域地場産業+文化”の再活性化策として、大きな意義を担い、地場優良企業による地域社会貢献として賞賛される…“歴史を視覚化する各拠点を、緑化し、ネットワーク”“散策して歴史を体感する、こころ豊かなまちづくり”に、更なる貢献を期待したい。
(笠嶋 淑恵)
主要用途 企業博物館、工場
構  造
鉄筋コンクリート造
(一部鉄骨造)
階  数 地上2階
敷地面積
6,318.47 u
建築面積
3,288.60 u
延床面積
5,173.44u
建築主  株式会社
  Mizkan Holdings
設計者  株式会社
 NTTファシリティーズ 
施工者  株式会社 竹中工務店

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