戸建て住宅が大半を占め、集合住宅や小規模な工場跡地の混在する、福井駅から歩いて10分ほどにもかかわらずゆったりとした住宅地に位置している。南側の接道には駐車場と外収納の壁面を配置しており、間を置いた東向きを開放している。奥にある離れにも収納室を北側に配置し、間をおいて祖母の寝室となっている。建て替え以前にあった庭木が東向きの掃出し窓から垣間見える、安心できる寝室となっている。北面には廊下の採光窓が一つ、隣家に接する西面の開口部も少ない。プライバシーを保ちながら内と外が穏やかに繋がる配置となっている。
東向きの玄関を入るとホールへと続いている。ホールの床面から60p高いスキップフロアの食事室に繋がる和室は天井が低く、ホールの開放的な空間の一部に入り込んだ祠のような空間となっている。南面を仏壇と収納で閉じ全面道路に開放された前庭からの視線を遮り、東面の小さな窓と北面に窓のある、落ち着いた和室である。建物を構成している空間が開放的な部分とこの和室のように包み込まれた空間とで構成されている。生活に活性と鎮静をもたらす空間のリズムはホールとこども室や2階の和室の関係などにもみられる。
直方体の空間にそれぞれの個性を持たせ、メリハリのある構成はバランスもよく成功していると思われる。キッチンの天井を高くしたため2階の和室へ空間が切り込んだ一部をガラスとしたことや、引き戸の取手を半透明にするなど、光が透過することで互いに気配を感じあえる細かな工夫もみられ、愉快である。建物の一部である玄関わきの自転車置き場と外収納の部分に耐力壁を配置して、ホールの大きな開口部の東南の柱が建物の隅柱となることを避けている。合理的な構造計画だと思われる。水平剛性や無落雪による過大な鉛直荷重についても提案が期待できそうだ。木工事の施工精度はよく出来栄えもよい。
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