所在地 :愛知県安城市 |
計画地は愛知県安城市、地域社会が色濃く残り温かみのある街で、区画道路が放射状に伸びた三角形の区画イメージを建築物にトレースする設計意図を冒頭に掲げる。住宅と併設店舗の配列でも、土間を介した2つの直角三角形の斜辺をずらして境界に引きを取る平面構成が基本となっている。 現地審査では建築主の気さくな奥様と好漢気鋭の設計者の阿吽・絶妙のシンクロが心地よく、施工者の頑張りも窺い知れた。キーワードは隠れ家的暮らしと開放的な通し土間で、建物際の爽やかな植栽・造園も併せてとても高感度の住宅である。家が前に出て店が奥まる配置上の疑問や、三角形平面や小分割に縛られた窮屈感の懸念は手品のように一掃され、むしろ、のびのび家族の身の丈のゆとり生活が羨ましく実感できた。 街路導入部に直面するのが店でなく家の玄関で いきなり食堂に通じる不思議…ここは勝手口で対外的正面導入は斜辺軒先から続く半内部化された開放土間と解すべきか。そこには器類の小さなお店とサロン的なオープン和室が面し、そこから家の領域のライブラリー・食堂一体空間に繋がる。どうも公私相互乗入れのヒエラルキーとフレキシビリティの妙が味噌らしい。家の2階はプライベート生活の自在完結フロアで、家族名々の居場所スポットが楽しげに交錯する。今は小さい3人の子供さんの成長に伴って一工夫を要するところではあるが…? 通りからの外観の印象は、シャープな三角平面2つがフォルムの高低差を伴って絡み合うにも拘わらず、とても穏やかな爽快感を醸す。設計者が敷地初見時にまず、背後に迫る高層マンションの横暴な街路景観闖入を緩衝したかった、との初志貫徹と理解した。インテリア・小物の隅々に至るまで、建築主と設計者の小気味よいこだわりタッグと受ける施工者の尽力の様が痛快に感じ取れた。 |
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(鈴木 利明) | ||||||||||||||||||
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