所在地 :愛知県長久手市 |
約30年前に開発された新興住宅地、外周道路の外側に位置する敷地。市街化調整区域の山地を、西方に2キロ以上も遠く望む。周囲には、住人個々の“景観向上意識・気運”が低く、成り行き任せで、沿道緑化も乏しく、デザイン意識の低い住宅が雑然と並ぶ。 この建物は、前面道路から大きく控え、砕石敷きのカーポートをとり、西側敷地境界に寄せている。周囲の住宅地の景観を、主空間からの眺望から排除すべく、南と北の両側に、隣地と接する、いわばバッファーとして、2階建て片流れの細長い棟を、壁のように立て、その間に、幅広く平屋を挟み、主空間とする構成。西側の下り斜面の緑地に面する、奥行きの深いウッドデッキに“落差による浮遊感”が生まれ、プライバシーが守られた半外部空間として、幅広く主空間と内外空間が連続する。 この住宅のさわやかな魅力は、ここに収斂している。玄関ホールと床レベルをそろえたリビング、そこから600上がるダイニング、ウッドデッキは、ダイニングの床から約100下げている。この主空間から、両側の棟の2階へ別々に上がる階段は、随所でスキップし、中間階が生まれる。この床レベルの変化によって、延床105.5uの小住宅に、天井高の変化と、書斎・作業・犬用等の小コーナーを生み出している…風が縦横に流れそうだ。 施主からの要求2点「あるがままの自然緑地の景観を、リビング・ダイニング・デッキに大きく取り込む」「家の中で、趣味のサバイバルゲームをするための変化に富む空間」を素直に空間化している。細部デザインの熟考度は、高いとは言えない。カーポート廻り、両側の敷地境界線、沿道緑化意識も低い、豊かな植栽を施せば、この住宅に奥まりをもたらし、周囲の景観形成・向上にも寄与できる…今後の進化に期待したい。 |
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(笠嶋 淑恵) | ||||||||||||||||||
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