所在地 :愛知県西春日井郡 |
県営名古屋空港から約1キロ圏、北側ほど近くに、町立小学校がある。小学生や保育園児が行き交うという交差点側では、この建築は、大きな岩のような在り様…風にそよぐ、ソヨゴやアオダモの広葉樹と、大ぶりの踏石、灌木、蔦、苔による“数寄屋の作庭法の進化形”の1要素ともとれる、RC打ち放しの塊/マッス。建築デザインと“自然石と樹木のデザイン”との協働・共振…交差点側の外観と、引き戸を開けて踏み入った中庭で、相乗効果を上げている。 中庭では、上部に穿たれた、円形の開口と、緩く盛り上げ、苔に覆われた築山に、光を受けて、コハウチワカエデが風にそよぐ。空へとシンクロするシーンは、美しく清々しい。リビング奥から中庭を介して、施術室までが見通せる。中庭のFLから僅かに低いリビングの床レベル設定によって、ソファーに腰を下ろせば、苔庭が醸し出す風雅な静謐の中に、ゆったりと沈み込む…安息。 2階は、やや薄暗く「陰影礼賛」か、個室には、ふさわしい。2階奥コーナーの出窓からの採光は、床開口を経て、1階のキッチンの奥に光を落とす。1階から声を掛けることもできそうだ。内部空間は、落ち着きをもたらす適度な開放性と、個室回りの薄暗い奥まりによる内密性、意図的に計算・構成された“空間・光のヒエラルキー”が住居に相応しく、優れた内部空間構成。 しかしながら、交差点の反対側に回り、他の外観2面を眺める、突起するRC造の大小の出窓によって、作者の志向する「もの派のデザイン」は、破綻…ものの在り様と日常生活要求との葛藤、矛盾の現れ…切れ味の放棄。中庭でも、脱いだ靴が収納できず表れたまま、洗濯物もここに干される模様…風雅は破綻。住宅建築は、規模の割に課題が多く…悩ましい。限られた敷地面積を微調整して、サービスコートは、捻り出してほしい。 |
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(笠嶋 淑恵) | ||||||||||||||||||
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