所在地 :愛知県日進市 |
新興住宅地における新しい住まい方を提案するよう、デベロッパーアーキテクトが企画した大学研究室対抗実施コンペでの当選案である。敷地は丘陵地を造成し民間デベロッパーが開発した郊外戸建て住宅地であり、隣接する3区画で新しい郊外の住まい方を提案するよう求められた。 設計者は、ひな壇造成されようとしていた2.4mの高低差を0.4mごとの段差に分割し、それぞれの区画の境界線を跨いで住民同士が緩やかにつながるような「ソトマ」をもつ配置を提案した。 「ソトマ」はデッキの中央に砂場が設けられ、3軒共有の庭であるだけでなく、周囲に開かれていて地域住民がコミュニケーションを図る場にもなっている。 ソトマを取り囲む3軒の住宅は、ボックス状のボリュームを平面・断面方向にずらせて重ねた構成とし、程よく分節された敷地の高低差をうまく活かして、それぞれの空間は独立していながら、スキマからお互いが垣間見える関係と囲われ感と抜け感のある空間をつくりだしている。プライベート(居室)→セミパブリック(LD)→パブリック(ソトマ)→地域、が緩やかにつながってゆき、外の居間としてのソトマが街並みに開かれた風景をうみ出している。 計画の最大の特徴である「ソトマ」空間は、この敷地を購入した3軒の若い世帯と対話(ワークショップ)を重ねて出来上がっていったものらしい。ソトマを貫く境界線で敷地を区切っても無理のない配置となっているため、住まい手に大きな負担もかからない。3戸だからこそできる無理のない関係だともいえる。 三軒協定とかコーポラティブハウスとかだと制度的になりがちであるが、ここではお互いの合意だけで成り立っており、それが却って一体感を持ちながらお互いに気を遣う隣人関係をうみ出しているのだと思う。ここに移り住んできたまだ小さな子供たちがどのように成長してゆくか楽しみである。 制度で縛られるのでない、「近からず」「遠からず」の近隣関係はこれからの郊外住宅のあり方を示すものであろう。 |
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(陶器 浩一) | ||||||||||||||||||
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