所在地 :愛知県名古屋市昭和区山里町18 |
南山大学名古屋キャンパスは、アントニン・レーモンド設計のキャンパス(山里キャンパス)と、その東北の新キャンパス(八雲キャンパス)からなる。新キャンパスの東には、同じくレーモンド設計の神言神学院があり、更に山手通りに繋がる。この新キャンパスで、理工学部と総合政策学部の校舎として計画されたのがS棟である。既存キャンパスが作られた当初、1,000人ほどであった学生数は、総合政策学部の瀬戸からの移転が完了すると、全学で10倍ほどになるという。一個の生き物として大学が新陳代謝し、増殖していく中で、南山大学のアイデンテティとも言うべき、レーモンドのキャンパスを維持し、その人間的で牧歌的な情景を継承できるのか、これは困難であるが、実に意義深い課題である。 S棟は、既存キャンパスと軸線をあわせて、教室棟と研究棟の2棟を平行配置し、これらを地下のメインストリートで繋ぐ。各棟には、ルーバーや庇、赤土色の外装色などにレーモンドの手法が引用されている。メインストリートに取り付く大教室や食堂の屋上部分、高層の2棟の間の中庭はそれぞれ、オープンスペースとなる。こうしたオープンスペースは既存キャンパスとの繋がりや、山手通り側に設けられるメインアプローチを配慮しており、学園の象徴的存在である神言神学院の眺望も意識されている。学生が歩き、留まり、談笑するオープンスペースには、かつて雑木林であった敷地の樹木などが植栽され、今後、その成長によって土地の記憶を回復することが意図されている。 これらの実現に制約が少なくなかったことが、感じられるが、なお、レーモンドのキャンパスへの深い共感と敬意が大学関係者や建築関係者の間で共有されていて、初めて実現できたことも理解できる。今後、時を刻む中で成熟し、周辺の環境にも大きく貢献していくことを期待したい。 |
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(菅原 洋一) | ||||||||||||||||||||
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