所在地 :長野県下高井郡木島平村大字上木島38−1 |
使用されなくなったトマト加工工場用地を、村が古い建物ごと買い取って、農業の六次産業化の拠点として改修したものである。機能としては、近隣農家の生産者マーケットやキッチンスタジオ、カフェ、レストラン、交流ホールなどを備え、裏方には本格的な食品加工設備を有し、木島平の農産物加工品を当施設で販売するとともに各地へ出荷している。 建築的な操作としては、既存の鉄骨造の工場から細々した増築部や間仕切り等を撤去した他は、床や柱梁・天井・開口部等ほとんどが工場の頃と変わらずに残されている。そのような元工場の大空間に、「六次産業化の拠点」としての機能を担保する各種用途を内包した、白い家型のユニットが挿入されることで全体が構成されている。家型ユニットは既存鉄骨躯体を補強する耐震ブレースとしての役割を果たすともに、その壁面および屋根・天井は、ポリカーボネート折板/ガラス/透光断熱材/ワイヤーメッシュ/ガラスクロスパネルといった透光性のある素材を何層にも重ねて作られており、冬の積雪時にも柔らかな光を内部に導くことが予想される。 内部空間では、鉄骨の垂木がむき出しになった大屋根の下、古い構造体や仕上げと新しい仕上げや家具といった新旧の要素が、あまり強くないコントラストで混在している。その新旧のやや雑駁な混ざり具合が、新築のデザインが行き届いた建築にありがちな緊張感を解消し、場にほどよくルーズな雰囲気を与えている点は注目される。そのルーズさが、施設の運営スタッフたちがレジ台を自作し付け加えたりといった、使い手の主体的な介入を誘いだす親しみやすさに繋がっているためである。 全体として統一というよりは雑然という表現が似あう空間ではあるが、新旧のコントラストというに単純な手法に頼ることなく、多様な要素を混在させかつ混沌に陥らず魅力的な賑わいとして作用させている点に、デザインの緩急をコントロールする設計者の確かな力量が示されている。 |
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(柳沢 究) | ||||||||||||||||||||
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