所在地 :愛知県豊川市市田町北ノ坪1−1 |
500年の歴史を持つ浄土真宗寺院の建て替え計画である。もともと小さな集落の中に位置していたが、本堂の老朽化と敷地の狭隘化のため、集落の端に位置する農地を農転・開発許可を得る事で新築する事になった。 そこで設計者がまず考えた事は、寺院の本来の役割、即ち、単に仏事だけでなく、いつでも自由に人が集まれるような場所、様々な使い方の出来る地域コミュニティの核となる場所とすることであった。 移築した山門から足を踏み入れると大きな前庭越しに本堂が建つ。 一対のキールアーチの上に山形屋根を載せたやわらかな入母屋は、威厳を与えるのではなく、遠くに見える穏やかな山々や周囲の田園と調和して宗教とコミュニティが共存する象徴的空間となり、これからの地域のあり方を示すような新たな風景を作り出している。 内部はダイナミックでありながら落ち着きの感じられる木の空間が広がる。 緩やかにカーブを描くヴォールトと勾配屋根の組み合わせによりおおらかな空間は規則正しく並ぶ木造梁のリズムによって荘厳な空気を作り出す。また、鉄骨のキールアーチによって窓際に柱の無い空間が生まれ、障子に仕込まれた無双窓を開け放つと内部から広場を通して周囲ののどかな環境と一続きの空間となり、静かな祈りの場が一転して伸びやかで開放的な集いの場に変化する。 この場で繰り広げられる様々な営みが目に浮かんできて心地よい。 過去から引きついできたものを大切に守りつつも過去に囚われることなく、これからの寺院のあり方を追求した意欲的な作品である。 |
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(陶器 浩一) | ||||||||||||||||||||
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