所在地 :愛知県名古屋市 |
名古屋駅から北へ2.3q、都心近くながら、周辺は、高層建築は少なく、大半は2、3階建。ここに、敷地470u、建築面積214uの平屋のコートハウスとは贅沢な土地利用。道路沿いは、来客用緑化カーポートを配し、窓の無い辛子色の外壁とセダン2台駐車可能なキャノピー、白い軒の水平線が延びる、静かに閉じた外観。通風用小窓は、他の外周壁の凹部に隠されている。玄関を入る、中庭と屋内の境界面は、全てガラスで視覚的に開放。居心地の良いアルコーブを絶妙に散在するように、FIXと片引戸の位置が熟慮されたガラスの凸凹面、水平屋根のライン、大小の土間が意図的に複雑にずらされている。軒下テラス、内土間、洗濯物干場、外流し、縁台や随所に置かれた椅子。土モルタルのあぜ道で区画された、菜園、芝庭、ハーブ畑。畑仕事をする親を子供が眺めたり手伝ったり、小動物を飼育、草花を栽培、収穫野菜でバーベキュー、庭でのお茶・食事、ボケーと雲を眺める、家族の様子を中庭を介して相互に窺い知る・・・多様な情景。「季節感にあふれた、おおらかで気持ちの良い、素朴で豊かな親子の交わり・暮らし」「屋内と屋外の境界線で内外が混じり合うように」オーソドックスな内部空間に、意図が集約された境界ゾーンが付加され、豊かさが相乗。コートハウスは、セキュリティー重視、プライバシー尊重の典型、概して抽象に向う。近年、メディアによって流布される住宅が、フォトジェニックに流れ、家族の暮らしのイメージが乏しいと筆者は憂えている。が、この住宅は一線を画する。“多様な日々の暮らしを具現する、複雑系だがシンプルデザイン”「ピッチを揃えた、表しの小梁と柱、珪藻土塗りの真壁」と「水平屋根の上に、鼻から控えた、水勾配をつくる薄い置屋根」が一貫する、システマティックな木架構。複雑化と単純化の塩梅が知的で秀逸。素朴な風合いだが、新しい。 | ||||||||||||||||||
(笠嶋 淑恵) | ||||||||||||||||||
|
|