所在地 :愛知県豊田市 |
4820席収容のスタジアムは自動車などの部品をつくる企業の社員と家族の為の福利厚生施設として既存のグランドのある敷地に建設された。 猿投山の眺望を壊さないように高さを極力抑え、風景に溶け込むようにグランドから12m高い敷地を段状に掘削して観客席をつくり、柱や壁がなく極限まで低く抑えた屋根がそっと地面に添えたような特異な形態となっている。 細い部材を組み合わせたキールトラス構造による屋根は、折り紙のような形で大空間にリズムを生み出し、雨水を排水枡まで導く機能も併せ持っている。 観客席のベンチや来賓席などに地域産の間伐材を多用し、ベンチが連続する段状の席は馬蹄状の形になってグランドに続いているので観客とグランドがつながり、スタジアムとしては柔らかで和やかな印象の空間となっている。 照明器具や空調設備が全く無いのだが、透過性のある膜屋根から柔らかな光が降り注ぎ、個室のトイレの天井もトップライトとなっているので明るく、壁や窓を設けず自然の風が通り抜ける為、これだけの大空間だがメンテナンス費用はあまり掛からなく維持管理しやすい計画で、エネルギー環境にも貢献している。 148mもの大スパンを極限まで低いアーチを架ける構造は、工法・施工共に大変であったと察するが、完成した姿は苦労の痕跡を全く感じさせない。 「能ある鷹は爪を隠す」高度な技術ほど軽快で美しい。 造成された敷地も森に返るように植樹をして、森の中に屋根だけが浮遊した姿になることが、スタジアムのコンセプトである。 完成する姿をイメージして評価しているが、これから今までには無い自然に寄り添うスタジアムを表現して欲しいと願います。 |
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(川口 亜稀子) | |||||||||||||||||||||
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