所在地 :岐阜県羽島郡岐南町伏屋1丁目38番2、39番,40番,41番,43番 |
幼稚園児の減少、働く母親の増加に伴う保育園の需要の増大に、幼稚園と保育園を統合する「こども園」等、又、設備の高度化等の運営上の理由による、保育園建て替え時の統合、これらによる、幼児教育施設の大規模化がみられる。昨年の中部建築賞でも2園を統合した延床面積約2,000uの保育園の応募があった。大規模化に対して、「幼児期に対する深い洞察に基づく“こども時代を守る”保育のあり方が、深まらないまま、幼児が1日の大半を過ごす、施設が造られている」ことに筆者は愕然とし、憂慮してきた。 岐阜市の南、岐南町の東部、風景の半分が田畑、小規模工場が点在し、戸建住宅が増えている辺りに、この建築は建つ。既設町立保育園の民間委託に伴う、3歳未満児棟の増築。「子どもの育ちと共に、保護者の子育てをも支える」という、保育園側の想いは、重要で、更に子育てに関する学びの会も開催してほしい。保育園は、保護者と保育者、同世代の職業人として保護者間のコミュニケーションの場としても、有意義で、地域社会の核にもなりうる。その点、この建築は、威圧感の無い、高さを低く抑えた水平屋根に、4つの小さな突起がランドマークとなって、親しめる雰囲気を醸し出し、周囲の景観向上にも寄与している。内部空間は、保育室の基準面積を、ルームとハウスの2つのコーナーに分節、ガーデンと合せて、1保育ユニットを構成。全体は、コミュニティースペースの周りに、3ユニットが分散配置。この建築の功績は「空間を小さく分節」していることにある。だが、ハウスが通り抜けになっていることは、幼児の意識の集中を阻害し、大いに疑問。就学前の幼児は、内部感覚と外部感覚の全て、感覚系を駆使して、いわば、こころとからだで、自然と社会、外界を正に感受しようとしている。したがって、幼児を育む空間は、何より自然で、根源的で典型的な空間の性格が、外部から内部へ、具現されるべきである。感覚系が裸で存在しているような幼児には、庇護されていると感じられるシェルター/開放性から、意識が集中する/内向性、更には内密性/奥と、感じとれる空間、柔らかく、自然な素材が相応しい。残念ながら、我が国の保育施設関係者の“幼児期”への洞察は、まだまだ浅い。 |
|||||||||||||||||||||
(笠嶋 淑恵) | |||||||||||||||||||||
|
|