所在地 :愛知県豊田市 |
豊田市の住宅街に位置する二世帯住宅である。二世帯住宅の計画においては、言うまでもなく二つの世帯の距離感をどのように調整するかがポイントとなる。この住宅では長方形の平屋の平面のほぼ中心に、ハイサイドライトからの光があふれる小さな室内の中庭「光庭」を設け、それによって二つの世帯を分離し、かつ繋げる境界領域としている。 断面的に見ると、光庭の床が周囲の床より1.4〜1.8mほど高くなっている点が肝である。立ち歩く際には光庭越しに別世帯の気配を感じることができるが、座った際には水平方向の視線が遮られる一方、低い位置から光庭を経て空に視線が抜ける仕掛けとなっている。巧妙である。外観は一つの巨大な寄棟屋根に覆われた一体感の強い姿をしているが、内部に入ると光庭に区切られたスペース毎に切妻形の勾配天井となっており、各場所の空間的独立性が強く感じられる。勾配天井には光庭から漏れる反射光が明暗のグラデーションを描き、空間に奥行きと広がりを与えるとともに、世帯間の交流の場となる光庭を、文字通りハイライトとして象徴的に浮かび上がらせている。実に巧妙である。 外部や周辺環境との関係という点では、高密な都心部であればまだしも、比較的低密度な住宅街の面積的にも余裕のある敷地において、このように閉鎖的な構えとしたことについては、光庭の効果を強調する意図があるとはいえ(あるいは施主の要望によるのかもしれないが)、何か別の方法があったのではないかと疑問が残る。しかしながら、軒を低くし開口部を絞ったそっけない印象の外観に対して、内部には光庭による求心性・天井による分節・光庭を巡る回遊性が相まったドラマチックな空間体験が用意されていることが、この住宅の強烈な魅力である。 |
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(柳沢 究) | ||||||||||||||||||
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