所在地 :愛知県稲沢市国府宮1丁目1−1
 尾張大国霊神社は、旧暦1月の儺追神事(はだか祭り)で知られる。厄払いを祈願する祭りは、祭りの中心的存在である神男が、裸男たちのもみ合う中に飛び込んで最高潮を迎え、やがて神男は興奮の渦を抜けて儺追殿に辿り着く。儺追殿は、神男の選定、潔斎の場、更に神男が駆け込む場であり、神事に不可欠の重要な施設である。重要文化財の楼門や拝殿をはじめ、伝統的な殿舎が連なる境内にあって、神事の遂行に関わる儺追殿が、前身の殿舎の基本的な構成や形態を継承し、伝統様式の木造建築となるのは、当然の前提であった。こうして、儺追殿の設計条件として、既存建築群との調和、使い勝手の良さ、伝統構法による優れた耐震性耐久性が設定された。
 この中でとりわけ注目されるのは、優れた耐震性耐久性を得るための試みである。儺追殿の規模は延床面積600uに迫り、伝統様式の木造の殿舎としては大型である。ここでは過去の建築に遡っての構造的細部の探索と有効性の検証により、柱頭の平 、ダボ入りの板壁や小壁、矩形長押、足固貫を構造要素として用い、接合部を金物に頼らない方法が創案されている。更に天井裏には厚板を全面に用いた水平構面を設け、限界耐力計算による耐震性能評価を満足させている。また、そこで実現された細部意匠、外観や内部空間も、洗練され、完成度の高いものとなっている
 この取組は、伝統木造建築を創造的に継承するものとして意義が高く、今後も参照されるべき、有益な内容を含んでいる。このような意義に鑑み、本作品は特別賞に相応しいものと評価された。
(菅原 洋一)
主要用途 神社
構  造
木造
階  数 地上1階
敷地面積
17,001.45 u
建築面積
750.33 u
延床面積
598.15 u
建築主 尾張大国霊神社
 宮司 山脇 敏夫
設計者 株式会社 木内修建築設計事務所
 代表取締役 木内 修
基礎設計
有限会社 太田建築設計
 代表取締役 太田 伍郎
施工者 清水建設株式会社 名古屋支店
常務執行役員支店長 井上 和幸

一つ前へ戻る