所在地 :滋賀県守山市水俣町1380−1ヤンマーマリーナ内 |
琵琶湖大橋近くのマリーナの一郭にあるホテルである。周辺は新興の住宅やロードサイド店舗が立地する雑然とした風景が拡がり、湖岸に迫ってきている。エコトーンの名は、このような中で、湖から陸にかけて次第に様相を変え、豊かに生物を育んでいく環境の再生を強く意識したことによる。ホテルと湖岸との間には内湖を模したビオトープがあり、山側には記念植樹スペースが拡がる。結婚式を挙げた人たちの植樹によって、ここはやがて雑木林になっていくという。 両端のコアを折板構造のスラブで繋ぎ、長辺方向を開放する単純な構造であるが、上階のセットバック、平行ではない構造壁、出入りする庇、山形の屋上などによって、形態は不整形となり、無機的な規則性は退けられている。両端コア部分の淡褐色のドイツ壁、庇や屋上の緑の被覆によって、建築は堆積した丘のようにも見え、それ自身が風景の一部となっている。 内部壁には様々な仕上げの土の壁と板壁が併用されている。三和土床、板床とあいまって、手仕事のうかがえる暖かい素材感は、コンクリート打ち放しの折板天井など、硬質の構造躯体と好対照をなしている。 客室から廊下には風が通り抜ける。結婚式などの行われる別棟のホールは、通り抜ける風がホール上部の弦を振るわせ、ホールを楽器に変える計画がなされ、屋内は葦のそよぐ湖岸の風景と一体となっている。 このホテルの美質は、土地のヴァナキュラーな素材を巧みに取り入れ、血の通った建築を実現させたことにある。ありふれた土地の土や緑、風が建築として結実し、湖水や山並みの風景が一層魅力あるものとして迫ってくる。風土と建築の関係の可能性について、正面から取り組んだ建築であり、建築のあるべき方向性の一つを示すものとして評価される。 |
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(菅原 洋一) | |||||||||||||||||||||
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