所在地 :石川県能美市 |
応募作品のポートフォリオは内部空間と雑木林の写真が幾重にも重なる印象的なレイアウト。 コンクリート打放しの室内に一人の男性が佇む様は詩的でゆったりとした緊張感が漂い、簡素で計算された空間構成に思わず引込まれた。 その建物は20年以上経過した住宅街の端に位置する。 駐車場からスパンドレルのブリッジを渡り2階の屋上にアプローチ。 1階に降りると雑木林とのどかな田園風景が広がる。 クライアントはステンレス加工業を営み、著名なデザイナーの仕事を請け負っている。外壁の一部の樹木を象ったパンチング部分はクライアントの作品である。 延べ床80uのコンパクトな住まいは別荘として存在する。自宅と作業場と別荘はそれぞれ車で30分の距離に位置しており、その時の状況で住み分けている。 四角い箱を用途に応じた広さに9分割し高さを変え、3度角度を変えて各部屋がつながる。 ワンルームのように回遊出来るレイアウトは、何処にいても四角い窓から雑木林が見えるが、部屋を移るごとに空間の変化と新しい風景が広がる。 意図的に3度振った部屋と隙間の連続は、光や映る風景のズレが違和感なく奥行きと不思議な安定感を生んでいる。 コンクリートとステンレス、自然の中に馴染まぬ異素材と思いがちだが、パンチングされたステンレスに樹木が映し出し、建物より高い木立と重なることで一体化された新しい風景を創り出している。 通りから一見すると造成地に建つ簡素な建物に見えるが、造形的にも居住空間としても質の高い計算された建築である。 |
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(川口 亜稀子) | ||||||||||||||||||
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