所在地 :愛知県岡崎市明大寺町大圦63−2の一部、63−3の一部、90−1の一部 |
岡崎駅から東北方向へ2q、住宅地の1角、賃貸アパートの建て替え。「単純に見通せないように、面的・線的に、空隙を連担し、垂直・水平に抜く」「人と人が暮らしの中で自然に、接触・交錯し、視線が交わる」「気配が感じられる共有の半外部空間」「列柱・飛梁で領域性をつくる」「露地風の抜け道でアネックスを連担」「3種の外壁材による場面転換」「随所にささやかな表出スペース」「風や光の道」等の建築的シカケ/プロトコルの重ね合せ“コミュニティーの仕掛け”が随所にかけられた、複雑系の空間構成による9戸の集住体。1階部分には、高さの異なる軒下空間に絡めて、アネックス3か所、借り増スペース2カ所がテラスと共に分散配置。もの・こと・ものがたりのデザイン。この様な賃貸住宅は、好奇心旺盛で、同類を求める、アイデンティティー意識が強い人々が集まる、メガロポリス圏でしか成立しないのでは?人口37.5万都市岡崎で、借り手が有るか?アネックスは、どのように活かされているか?素朴な疑問を抱えて現地審査に向かう。主屋から両側にゲートの様に、付属棟が突出。敷地境界線沿い3周に、縦列駐車スペース、その内側U型に車路。この空地は、周囲の凡庸な建築から、空隙を孕むこの集住体を、際立たせている。砕石、レンガチップ、ウッドチップの3種の表層材は、自然な素材感を出し、道路から人を誘い込む。手作り感のある“やおや”の看板が目に入る。アネックスには、先ず、八百屋が入り、次に、その知り合いのネイルサロンが入居。次に、IT技術者が展示用に、設計事務所も利用・・・という、好調な連鎖があって、道路の向かい側にも、手作りベーカリーができた、という。住宅地の中に、新しい、人の出入りする“小さな核”が生まれている模様。GLから2,3段昇る各テラスは、ステージのようでもある。2辺に2戸の入口扉が接し、前面道路に面するテラスは、パフォーマンスか、デモンストレーションにも使えそう。柱列に囲われて、緩やかに視線を遮る布や簾を下げることも可能か。“古くて新しい、濃くて、適度に距離を置く、次世代型コミュニティー”を具現し、中部圏の建築文化に大いに貢献する、高度なスキルによる環境を包摂する建築。 だが、風雨に曝される柱梁にLVLの採用、左官の仕様に、複数の審査委員から疑問が出た。 |
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(笠嶋 淑恵) | |||||||||||||||||||||
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