所在地 : 八事交番:愛知県名古屋市昭和区八事本町100番6号 立体駐車場:愛知県名古屋市昭和区八事本町100番30、31 |
この長いタイトルが示すように、小さい建物ではあるが、非常によく考えられた建築である。長い時間をかけて、交番、役所、市民の人達を説得して歴史的建物の周りにバラバラに駐車していた車を駐車場に集め、交番を移設し、ビオトープを再整備し、次期の伽藍整備等につなげて行くものである。 ポートフォリオによる現地審査の案を選んだ時は、この建物と「一宮市尾張一宮駅ビル」は、隈研吾事務所や、その関係者だと他の審査員と話した記憶がある。現地審査で設計者と話しているうちに、担当の人の熱意や施主の人達の設計に対する理解の深さが伝わってきた。既成の駐車場を改良して、外部のエキスパンドメタルにはリン酸被膜処理を施し、内部の鉄骨には光沢軽減処理(溶融亜鉛メッキ槽の後、アルカリ浴槽に浸漬させる)を施し、この二つの異なった処理を重ねることで深見を出している。また一部にコールテン銅を使い、全体で和のやさしい表現としている。ブラックコンクリートを何回も実験し、交番の市松格子の外観を作り、駐車場と良くバランスした外観を構成している所は、中々だと思った。次の計画や、その時に利用する土コンクリート(彼の命名か?)等々、私も素材やディテールの改良や色々な事にこだわるが、彼のこだわりも並大抵のことではなかった。 元々三菱地所という不動産会社の中にいて、そこから巣立った三菱地所設計の社員らしい。メンテナンスやしっかりとした施主側に立ったスタンスと同時に、素材やディテールにこだわりを持つ彼が育ったということは、この会社の懐の深さだと感じた。彼がまた別の、特にある程度の規模の建物で、素材やディテールを越えて、光や影、そしてそこにいる人々が感動してくれる建物を作れるかどうかに興味がある。 |
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(新居 千秋) | |||||||||||||||||||||
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