所在地 :静岡県藤枝市 |
遠景のない敷地、三方に住宅が迫り、前面道路の向かいも外壁のみが見える。小高い丘の分譲地の一角にこの白いボックスの栖がある。 四角い陸屋根の箱が地面より80センチほど浮いている。四周のカベの内側に緑縁を巡らし、緑縁は居室により外部となり又内部の一部として取り込んでいる。設計者が現代の縁側と呼ぶこのスペースは内部空間に対し採光・通風・緑陰の仕掛けを演出している。 構造は鉄骨造で外周の内側に主構造を組み、4週はキャンチレバーで処理し、ハネ出しの先端に、下部を80センチ程カットした下がりカベが付いているという、単純明快なプラン・セクションである。 こういう敷地の場合、中庭もつコートハウスか、L字か、前面道路側に庭を作るかして、部分的に許される範囲内で大きな窓をつくるのが一般的であるが、4周を囲いながらも緑縁の屋根なし吹き抜け・外周下地窓・側面から充分な光が溢れ明るい。 外部緑縁を含めると床面積22坪+緑縁8坪=30坪の、広々とした空間に見えるから不思議だ。遠望のない住宅は鬱陶しいのではないかとの、私の心配は杞憂に終わった。 ガラスや、内部化した外部と同仕様のゴロタ石の掃除は大変で、夏も暑く、冬は寒いが、夏は下地窓の通風やエアコンでしのぎ、冬はストーブを置いて過ごしているという。オーナーもそのことは重々承知をしていて、それにも勝る空間の豊かさを享受しているという。そして、それ故に、メンテナンスを怠らない心意気が感じられた。 外部は閉じて内なるプライバシーを確保しながらも、適度にコントロールされた日の光と、緑陰のゆらぎが内外部一体となった白いカベに映え、さわやかな風が流れる。全体としてはワンボックスな拡がりのある、秀逸でスタイリッシュな空間となっていて素晴らしい。 |
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(増澤 信一郎) | |||||||||||||||||||||
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