所在地 :愛知県一宮市三丁目 |
昭和27年来、六十年間利用された一宮駅旧駅ビルの老朽化、平成6年以来整備が進められてきた本町商店街と駅とをつなぐ通称・銀座通りのシンボルロード化、地下駐車場整備事業に伴い、一宮市の新しい顔に相応しい良好な景観づくり、交流・文化拠点の形成を期待された再開発事業である。 鉄道・バス等の交通の結節点としての利点を活かし、中央図書館、中央子育てセンター、市民活動支援センター、ビジネス支援センター等の都市機能を集約し、中心市街地への人口の流動性・対流性を向上させることを目的に企画されたJR駅ビルである。 さて、本駅ビル計画で最も評価すべき提案は「シビックテラス」であろう。コンコース上2階レベルに市民の交流拠点となる1,100uにおよぶ半屋外空間を駅ビル正面に設けることで、外観デザインの際立つ特徴を生み出すとともに、その位置・横幅を銀座通りに揃え通りとの一体感の演出にも成功している。11月供用から9月現在までの平均稼働率は36.3%、週末は常に予約で埋まり、日本三大七夕祭り一宮市七夕祭りの会場として使用される等、既に市民に欠かせない場所となっていることが伝わる。 中央図書館も1月のオープンにもかかわらず9月現在で82万人の利用者を数え、一宮市民のみならず名古屋市、岐阜県の登録者数も急増しており、まちづくりの中核に図書館を導入するプログラムとしては近年希にみる成果を収めている。 さらに建築そのものに目を向けてみると、建物本体の周りに1.3m程のクリアランスを取ってアスロックの板がダブルスキンの如く全体を被覆している。アスロック同士は30cm程離しての設置を基本としながら、建築本体の開口部の開口率にあわせピッチを変化させることで、遠景からは無数の縦糸が織りなす被膜の如き繊細で動きのあるファサードを実現させている。それにも況して、「シビックテラスでの市民の活動風景」こそがファサードと評価すべきまさに市民活動の拠点に相応しい建物である。 |
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(熊澤 栄二) | |||||||||||||||||||||
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