所在地 :愛知県豊田市清水町二丁目79-1 |
このオフィスは豊田市の中心部から南西に5kmほど離れた名鉄三河線土橋駅付近にある。ちょうど市街化区域と接する市街化調整区域に建つ。このオフィスの屋上から周りを見渡せば、南は調整区域の田畑が広がり、北側は市街化区域ながらも公園や墓地、丘陵の緑が取り囲むため、文字通り田園環境のなかに建つオフィスである。約570uの敷地に平屋で床面積300uのオフィスは、田園風景に溶け込みつつも、存在を不思議と意識せる、アンビバレントな感覚を生む。 このオフィスを持つ事業所はもともと築炉工事業からスタートし、現在では人材派遣・育成分野へと事業拡張して、このオフィスが建てられた。社内スタッフだけでなく、顧客や多くの派遣される人々がここに集まってくる。日常の業務や打ち合わせは、固定席あるいは固定会議室ではなく、最も効果があがる居場所を自由に選んで行う、そんな社員の自主性を引きだすオフィスを意図している。屋内の土間や板間、屋外や屋上のウッドデッキなどの場は、季節や気分に応じて選べるだけの多様性をもつ。 多様な居場所を作るために、壁による空間分節では開放感がなくなるため、大きなワンルームの中で天井の凸凹形状と床の凸凹形状を直角に配することで空間を分節化している。この天井の形状は屋上の形状となり、座ったり、もたれたりできる。また、床の凸凹はステージやスタジアムに駆け上がる高揚感をも生み出す。この空間を作り出すために県産材による大断面集成材が梁として活用されている。吊照明器具は床の凸凹に合わせて配置され、一層天井との分節化を明確化している。 夏には突き出た庇と屋上緑化で断熱し、取り入れた風を「チムニー」を使って流れを創り出して冷却する。冬はガラスの大開口面等から日照を取り入れる。そんな温熱環境を作り出している。 田園にオフィスは非効率で成立しづらいイメージを抱くが、田園にオフィスこそ、クリエイティブな仕事を生みだす恰好の場であることを、この作品は明らかにした。 |
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(井澤知旦) | |||||||||||||||||||||
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