第42回 一般部門 入賞

所在地 :愛知県東海市新宝町30番6
アロン化成ものづくりセンター
 名古屋港周辺の「機能が裸で現れている工業地帯の景観」の只中に、この建築は、新しい息吹をもたらしている。主用途である研究・開発、試作・実験ゾーンを建物外周の西南東にコの字型に置き、この建築の先進性「ワークスペースのアメニティーの向上」を担うグリーンコートを中央に、北側に来訪者を開放的に迎え入れるエントランス、展示・体験・レクチュア・プレゼンスペース等が配された構成。ショ−ルーム機能によって、積極的にユーザーや関係者が訪れる機会を仕掛け「企業の先進的スタンスの表明」も図っている。来訪者が増え、就労環境の向上を進める社内気運も高まっているという。考案された「正三角形モデュール鉄骨造プレファブシステム」は、6本の梁が集中する18m間隔に設けた「タワー」が効いている。これは小空間を内包する6角形柱、いわば節とも言える結束装置で、細い部材による架構、空間構成、視覚効果の上でも、大いに有効。廊下を介さずに、空間用途の転換も可能。自然換気・排煙装置、ライトウェルでもあり、「大屋根から雨水を集める、浮いたプランター」という役割も担う。正三角形モデュールは、外に向けて現していないが、タワーは、そのまま表れて、外観を特徴付けている。審査会において「増殖システムの表出」が有るべきであろうという意見もあった。2階部分に配された、研究・開発部門スペースは、1方が吹き抜けに面して浮遊感が生まれ、「自由な思索が引き出され、闊達なブレーンストーミングが展開される環境」となり、このシステムのメリットを体現している。
 インテリアを巡り終えて「システム構成部材に貼り付いて見える階段やスロープ」「介護機器ユーザー実体験用住宅」は、グリーンコートのヴォリューム感を損ねていると思われた。エクステリアでは、アプローチ沿いに、ビオトープが造られた既存樹木帯が保存され、駐車スペース脇の芝生内に、介護用品の外部デモンストレーション用園路が造られている。海が近く、植栽には配慮が求められるが、更なる緑の景観づくりに期待したい。
(笠嶋 淑恵)
主要用途 工場・事務所
構  造 鉄骨造 一部
 鉄筋コンクリート造(駐車場)
階  数 地上2階
敷地面積 22,523.21 u
建築面積 6,346.53 u
延床面積 7,039.15 u
建築主 アロン化成株式会社
 代表取締役社長 矢田 昭
設計者 株式会社 森下建築総研
 代表取締役 森下 修
施工者 株式会社 安藤・間名古屋支店
 執行役員支店長 前原 弘光

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