所在地 :静岡県静岡市 |
この住まいは静岡市街地の中心静岡駅の南徒歩5分程度の裏通りに面した、まわりを中高層ビルに囲まれた谷間に、静かな存在感を与えている。これが仮にアリゾナのデザート地帯の一軒家だとしてもそのままの姿をイメージできたのは、都市と自然との環境の違いはあれ、周囲からの防衛と内なる空間の豊かさを追求する一般解として共通点があるのかも知れない。 設計者曰くプリーツ模様に下見板を横にデザインされたようなベニヤ打放し型枠のコンクリート壁は、平面的に細長い長方形の3つのゾーンの外壁を構成しているが、時の経過を光による微妙な陰影を映し出して流れを生み、重苦しくならないようにデザインされている。アプローチの屋根のルーバーも、同様な光による効果が生かされている。 敷地形状から生まれた、少しずつずれながら雁行して奥に入り込んでゆく3つのゾーンは、外周の壁の高さを変えて期待を抱かせながら、奥に導いてゆく。各々のゾーンを構成するRCの外壁はそれぞれが接合部で貫入するが、「ほつれ」と呼ぶすき間を生み、その存在が内外に対する息抜きになっている。 中央のゾーンの中庭には、谷底の泉のように天空を映し出す水盤が作られ、反射した淡い光はさらに白い内壁に映り込んで室内に広がりを生んでいる。 与条件を丁寧に紐解いて生まれた、単純ではあるが隙を与えない巧みな空間構成と光の演出は、包みこまれたような居心地の良さを生みだしている。建築主の人柄、設計者の力量と施工の技が、一体となって生まれた建築であると感ずることができた。 |
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(清 峰芳) | |||||||||||||||||||||
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