所在地 :長野県北佐久郡 |
軽井沢の閑静な林地に立つセカンドハウスである。ご主人の生涯の趣味である絵画制作アトリエをはじめ、書斎、蝶などのコレクションが並ぶ。施主の思いとして、夫婦のみならず地元の若い作家も招き地域のサロンとしてゲストハウス的な使用も視野に入れた建物として設計されている。 建物そのものは150mmをモジュール単位として、4200mmまでの数十種類の立方体の組合せにより、細部に亘って空間構成が徹底されている。150mmずつ大きくなるボリュームを規則的に重ね合わせつつ、外部に向かって徐々にズレを伴いながら巧みに展開させていく構成手法に建築家としての力量が伺える。 幹線道路からほどなく近いところに建っているにも関わらず、周りは樹木で完全に囲繞され、近隣の別荘の存在すら感じさせない。アプローチからの建物の眺めは、雑木林から透かし見えるランダムな光と色彩が混ざり、その境界は周囲と一体となって判然としない。建築家自らが比喩としたM.C.エッシャーの騙し絵の如く、外観のボリュームの散逸した表情が樹林と錯綜する風景を生み出している。建物の外見は、木、ガラス、鉄骨、コンクリートとアラベスクのように散りばめられているが、平面図と照合すると部屋の用途に応じて素材の使い分けが計算されていることが分かる。 「中心」という表現すら憚られるが、客室リビングに当たる大スパン空間にはコンクリートの壁面に木造のダイナミックな架構を臨むことができる。リビングを起点としてアトリエ付近は鉄骨、書斎には木造とガラスが固有な空間を形作りながら、相互にズレながら重なり、ボリュームの隙間からは外部空間が浸透する錯覚すら覚える。 内部の色彩は、素材感のある色味とサイケデリックな色が交錯し合い、空間構成で見せるmetamorphosisの原理を敷衍させ、軽快な内部空間を実現させている。 惜しむらくは、地区条例による形態規制に適合させるための庇とは言え、全体のデザイン原理に包摂し切れなかった点であろう。 |
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(熊沢 栄二) | |||||||||||||||||||||
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