所在地 :愛知県日進市 |
傾斜地に建つ小さな住宅である。敷地は、西に傾斜をもつ日進市の小高い丘の中腹に位置し、道路からは水平の部分が2mほどの崖のような敷地。建築主の希望は、家の中のどこに居ても遠くの景色を楽しみたいとのお話から、この家は発想された。エントランスの風景は、道路に対し低く抑えられた壁面にドアと小窓だけ。斜面に対して最小限地面を掘って崖の中腹にベンチのような基礎を設け、立ち過ぎず、埋もれもせず設計者の目指す「最も効率よく座る」を実現。基礎は土留めを兼ねRC造、床面の延長部分は鉄骨で跳ねだし宙に浮いている。中に入ると空中に鉄骨の床をもつワンルームの様で、それを透かして外の景色が見え始め、ステップを降りるとLDKのフロアに立つ。LDKの西面は全面ガラスで眼下に日進の街を広く見渡すことができる。最小限のスチールのフレームに木製建具の框ドアが隠れ、ドアを引くと前面のテラスに出られる開放的なスペースとなっている。二つの正方形が連なった形を前面道路の蛇行に合わせ回転させた結果の多角形プラン。壁は平行な面が一つもなく、不思議な感覚である。壁の切れ目にトイレがあり、奥のバスルームから街の風景が見え、角度を振った事で、その壁が外部からの目線を遮っている。細部のディティールもよく考えられており、よく検討され、建築主の理解と施工業者の三者の連携でこの家は成立している。外観はあたかも崖に張り付く帆船の様。この家を後にして坂道を降りるとあたりは真っ赤な夕焼けに包まれ、あと少しあの家にいればと後悔した。 | |||||||||||||||||||||
(冨田 真知子) | |||||||||||||||||||||
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