第42回 一般部門 入賞

所在地 :愛知県名古屋市
 bird houseの名前のごとく枝振りのような基礎の上に3棟の建物がちょこんと巣掛けている。

 愛知県名古屋市の緑が残る閑静な丘陵地に住宅が立ち並ぶ環境。
 一般的にはまず擁壁をつくり土留めをしてから建物の建設となる訳だが、コンクリートの連続した壁は自然を阻害し景観を損なうことを疑問視した。

 土木工事の可能性をスタディした建物は、ヘアピンカーブした角地を上手く利用し、上下に接道するアプローチをジグザグ状のスロープでバリアフリー化してそれぞれの突き当たりに建物を配置している。
 敷地の原形を残し極力樹木を痛めず斜面に置かれた建物は豪邸が立ち並ぶ環境に小さく可愛く控えめに存在する。
 3棟をつなぐアプローチの隙間からは斜面の緑が見え、風や光の通り道となり、行き交う人や車の気配が感じられる。住宅地にフッと息が抜けるような場を提供しているようだ。
 街の中でプライバシーを守り、防犯性を高め個々で完結される住宅の多い中で、自然を守り地域に開けた巣箱は、新しい住まいのあり方を投げかけている。

 住み心地はいかがなものか、と室内に入ってみると簡素ながらも充分機能を満足している。開放的でプライバシーが守りにくく思われがちだが、高低差を上手く利用して、外部からの視界を遮り眺望を楽しめる。
 傾斜地をいためず配置している為、斜面と建物に隙間を設けて土に接する壁面を少なくして湿気や水の問題の解決を計っている。

 スロープ越しに離れを眺める景色は境界線を越えて廻りの環境を取り込み、森の中の小さなお茶室を眺めている様である。特に夕景の光が美しく、行き交う人々の心を和ませる街の風景となっている。
(川口 亜稀子)

主要用途 住宅
構  造
木造
階  数 地上2階
敷地面積
428.21u
建築面積
113.74u
延床面積
117.46u
設計者 株式会社 宮本佳明建築設計事務所
 宮本 佳明
施工者 株式会社 井戸建設
 取締役会長 田治見 洋

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