第42回 一般部門 入賞

所在地 :静岡県浜松市南区恩地町321
 この保育園に隣接して同じ法人の運営する幼稚園があり、全体は幼保園であるが、この建物は保育園部分として独立している。浜松市の南部、車で30分程の郊外の田園地帯(市街化調整区域)の中にポツンと小島のように位置し、アプローチは接道する西側の道路からではなく、管理上、東側の幼稚園を抜けて、用水路を橋で渡って保育園の入口に入ることになる。
 入口から切妻の吹抜の直線の廊下を見通すとその先が西側道路への非常口となり、更に廊下は右回りに瓢箪型の曲線状に中庭の園庭を囲んで一周してもとに戻ってくる。廊下の南側には4.5歳と0.1歳児の室が、北側には2歳児室.3歳児室が配置されている。平面的にはあえて中庭形状としたのは、遠州の「からっ風」を防ぐ目的であると同時に、既存の幼稚園(同じ設計者によるコート形式の中庭を持つ。)との整合性を意識したものであると推察できる。
 この園舎の試みのひとつとして、できるだけ自然の空気の流れを内部に取り込み、空調に利用する手法を実践している。西側の空気塔から取り込まれた外気と地下からの地熱を利用し、廊下の下に配置された地下のトレンチを経て園舎全体を巡り、一部は床から、また一部外気は中庭に面した、外側に波型ポリカボネート板、内側に不燃布を張った2重壁の中を抜け、吹抜から外へ抜ける仕掛けになっている。空調機を補助的に使うことも考えているが、見学した中間期の晴天の日は、快適な室内空間であった。廊下に開けられたのぞき窓から床下のトレンチを除くと、遊び心で設計者の作った風車が気持よく回っているのがわかり、成功しているように思えた。
 この園舎は木造の在来軸組工法でできている。身近な木の構造を見せて、林の中の自然環境に身を置くようなイメージを重ねる効果をねらったそうで、あえて法的に条件の厳しい児童福祉施設に身近な工法を採用した結果、多くの障害に面したそうだが、克服した努力は評価できよう。今回の計画が運営のソフト面からどう生かされたか、また光壁と称する中庭に面した壁の評価等、意見が出たところではあったが、遊具を設計者自らが作製するなど、熱意ある取り組みと努力が評価されたと言える。
(清 峰芳)

主要用途 児童福祉施設等(保育所)
構  造
木造 一部 鉄筋コンクリート造
階  数 地上2階
敷地面積
1,976.24u
建築面積
969.64u
延床面積
997.43u
建築主 学校法人 頭陀寺学園
 理事長  鈴木 重道
設計者 株式会社 ナウハウス
 鈴木 幸治
施工者 株式会社 杉浦建築店
 杉浦 兼太郎

一つ前へ戻る