所在地 :富山県富山市惣在寺1090−1 |
この建物は最初、私を含めてほとんどの人が現地見学に行くという建物には入れていなかった。数時間論議を重ねる内に、この建物は写真映りは悪いが、一見の価値はあるという議論になり、もう一度図面や内容を見直し、私の票を入れてギリギリ現地見学に行くことになり、責任上、自分で見にいくことになった。 現地に行ってみると、中々複雑なプログラムをよく解いていることが分かった。私は常々自分の建物(公共建築)は、ローコストで中々他の人達が追従できないと思っていたが、この建物は坪90万円代の建物なのに、特殊設備(例えば火災実験等、火災に関するもの)を色々創意工夫し、特殊なメーカー(消防や農業関係の建物は、普段私達とあまり接触しないヤンマーディーゼル等々の会社)が作っているものを避け、うまく作ってあった。また特殊なサッシュを使わず、廊下等、窓の開け方を工夫し、奇をてらわない普通のデザインなのだが、居心地の良いものとなっていた。教室の中まで消防車が入れるもの、普段しまわれている色々な消防関係の車を庇の下にうまく置いて、来訪者に見せる、実験棟を燃やして、その消化活動に利用する方法や、二つの棟の外壁に付けられた穴の開いた板によって色々な建物の外部からの進入状況を訓練できるもの、火災の中での救助活動を見れる仕組み、4人部屋の中の個室的空間等々、見学時間をはるかに越えて、次の場所までの移動は恐るべきスピードとなったが、とても楽しかった。学会賞、BCS賞の審査を経験したが、こんなにすんなり、丁寧にデザインした建物には会ったことがない。欲を言えば、2階建てになっていた四季防災館ゾーンは、これくらい敷地が広ければ、1階とした方が良かった。1階はとても混んで人がぶつかりそうなのに、2階には中々人が上がらず、少し寂しかった。これは1階とした方が、ユニバーサルデザインの観点からも良いと思った。また施主、施工者、設計者がとても一生懸命説明してくれたことは、強く印象に残った。「百聞は一見にしかず」・・・デザインをもう一歩頑張れば入賞だったと思う。 |
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(新居 千秋) | |||||||||||||||||||||
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