所在地 :三重県亀山市椿世町547−1 |
この一帯にプロパンガスを供給する企業の営業所である。雑然とした市街地が田園風景にとけ込む狭間に所在し、用水路や水田が迫る中に建つ。2階建の素朴な家型は、一見して納屋か倉庫のようである。 隣接するガス供給設備との関係などから、建物が南北に細長く延びることや、南面には開口部が取れないことは、与条件となっていた。その中で環境負荷の低い建築をつくる事が、エネルギー企業の営業所であるこの建築の課題であったという。その解として考えられたのが、空調負荷の高い東西面の開口を極力小さくした家型を、西側では更に大きな家型で包み込みこむかたちである。入れ子の屋根裏はソーラーサーキットと名付けられ、ハイサイドライトからの採光や、煙突効果による外気の取り込み、冬期の屋根裏暖気の再循環、が意図されている。 家型の軽量鉄骨構造は、本社構内に残された古い煉瓦造倉庫の屋根構造に想を得たという。内部は1階のオフィス、2階のキッチンサロンや応接室ともに、屋根の下に拡がり、穏やかな光と微風が感じられる。キッチンサロンは料理教室の他、地域のコミュニティ利用、災害時の一次避難所として利用できるスペースとして計画されている。2階床は家型のトラスアーチで吊られるので、1階のオフィスは無柱となり、高さや明るさの変化を活かしてさまざまな場をつくることを可能にしている。 ここでは構造、設備、計画の検討に裏付けられた素朴な技術が、目に見えるものとして用いられ、住まいの基本となる単純な家型のかたちで具体化されている。それは素朴で単純であるが故に、普遍性と持続する大きな可能性をもつものである。小規模であるが、創造的で生命力ある事務所建築の誕生を評価したい。 |
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(菅原 洋一) | |||||||||||||||||||||
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