所在地 :石川県金沢市寺中町イ1番地1 |
敷地は、石川県庁の移転・外環状道路海側幹線の整備に伴い新都心形成による近代的な金沢の創出を図る駅西地域と、金沢港の再整備に伴い新しい海の玄関に相応しいポートタウンの建設を図る臨海地域、いずれも市街化が急激に進むエリアの境界に位置する。その一方で、金石・大野町という歴史的町並みと金沢駅を結ぶ金石街道と外環状線の交差地として、新興住宅地と知識集約型産業が近接する金沢西の「新しい顔」が期待されていた場所である。 フットプリントにして45m方・高さおよそ20mの巨大なボリュームは、余りにも周囲の風景に対して異質な箱である。しかし、外壁は6千個のパンチングされた彩光窓により壁面の重量感は希薄で、夜は無数の光を放つ光の被膜の如き様相を呈し、まさに「金沢西のシンボル」に相応しい。 内部空間は、軸力のみ受ける12m長のスレンダーな柱が作り出す明晰かつ軽快な空間構成にH.ラブルーストの代表作パリ国立図書館のその範を認めることができる。しかし読書空間そのものは、パリ国立図書館の如きポリクロムではなく寧ろモノクロムな静謐な光に溢れた被膜(壁)として、27万冊におよぶ本の存在感を浮き上がらせることに成功している。 加えて、この無数にパンチングされ、耐力しないように見える被膜の如き壁こそが、水平剛性を担保する外殻ブレースとして機能し、閲覧室に林立するスレンダーな柱の軽快な空間を成立させているという、「虚・実の反転」と言うべき建築構成に、日本の芸道の本質を見てみたい誘惑にも駆られる。 開館して1年半を経過し、「世界で最も美しい公共図書館ベスト25」にも選出された「美しい箱」であること以上に、現在でも5-6万人/月の来館者を数えるこの図書館は、地域コミュニティの形成の核となる地域交流拠点施設として、また地元住民からも生涯学習や育児支援、交流機能を併せ持つ地域のまちづくり拠点として、十分に金沢市民に愛されていることを寧ろ評価したい。 |
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(熊沢 栄二)) | |||||||||||||||||||||
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