所在地 :福井県三方上中郡若狭町熊川 |
熊川は、若狭と京を結ぶ鯖街道の宿場町である。平成8年度に重要伝統的建造物群保存地区に選定され、それ以降町並保存事業に取り組んでいる。小さな自治体がこの事業を行うことは、それほど容易なことではなく、さまざまな工夫が必要となる。ここでは修理修景設計は民間設計事務所が継続的に担当する。一方、施工者は設計者とともに伝統的な建築技術に関する研究会を続け研鑽を積んでいる。これに住民の保存会、保存審議会、自治体が連携し、それぞれの役割を果たす。これがこの町が作り上げてきた町並保存のかたちである。 伝統的民家の修理は、丹念な調査をもとにした復原が基本になるが、構造的な補強や今後の利用への配慮も必要となる。設計施工ともにこれからの世代に家を伝えるための、謙虚で誠実な仕事が必要であり、その仕事を通じて住民の理解が深まり、次の展開が生まれる。 こうした地味な営為の集積である町並み保存は、この穏やかな町並の過去と未来を繋いでいく創造性ある取組である。その中で更に、伝統的民家と人々の暮らしに込められた様々な知恵を発見し、再評価することも望まれる。熊川で続けられてきた、町並保存の取組の蓄積を評価するとともに、今後も着実に進展していくことを期待したい。 |
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(菅原 洋一) | |||||||||||||||||||||
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