所在地 :岐阜県関市 |
この住宅は関市郊外の周囲を田園に囲まれた数件の住宅が建ち並ぶ住宅地の一番外側にあります。 軸を振ることは街並みの中で異質な雰囲気を醸していないかと心配しながら現地に到着、遠くから眺めてみると田園の向こうにしずかに違和感なく佇む住宅でした。 玄関の引き戸を開けて、『外の部屋』に立ち右にどこまでも続く田園が見え、左にリビング、正面に山ボウシの木、内なのか外なのか空も見えました。なるほど『外の部屋』でした。外壁を伝う雨の枠から垂れる滴(しずく)を見ていただこうかしらと奥様はキッチンに立ちながら、にっこり私達を迎えてくれました。靴を脱ぐ前に外の部屋の大きな開口から田園の向こうに家のある風景が見え、車が動いていなければ大きな絵なのかと錯覚してしまいそうなシャープな枠は、スチールなのかと思いましたが、板金の加工でした。すべてに計算されたディティールには感心させられます。設計者のこだわりを施工者が十分理解され、シンプルな納まりが随所に見られそれ故に美しいディティ―ルは、この家をなおいっそう美しく仕上げています。既製の照明器具も一つ一つ精査し、天井に四角の穴を開けシンプルなボウル球をダウンライトの代わりに埋め込むと枠や飾りが気にならず、コードペンの根本も四角い穴のなかに隠れてしまう。合板は、無垢だと考えれば、納まりのための枠は不要で、手摺も再考できる、既成の考えにとらわれずひとつひとつを検討精査することがコストも含めてシンプルな納まりを実現できるということなのだろう。2階のプランは、外の吹き抜けと内の吹き抜けを持ち、個室群をミニマムとしながら『みんなの部屋』を共有することでゆったりと暮らせそうです。 外部の4つの庭は、軸を振ったことで駐車スペースが約4台取れています。生活の庭は、浴室から見ると奥行きを感じられ、隣家との視線をずらし距離を保つことができ、なぜか不思議と広々とした庭となっています。軸を振ることは、この敷地に住むための必然だったのです。 |
|||||||||||||||||||||
(冨田 真知子) | |||||||||||||||||||||
|
|