所在地 :石川県金沢市広坂2−1−1 |
平成15年の石川県庁の移転にともなう金沢中心部の空洞化対策としての賑わい創出、建築学会からも保存要請が出されていた旧石川県庁舎の保存再生を目的として旧県庁舎跡地再開発計画が進められた。兼六園から石川四高記念館を含む中央公園までの園路動線として広坂通り用水から分水して「せせらぎ」を整備し、広坂通りと一体で都心回遊性を確保するとともに、金沢城側は都市の余白として開放的な「芝生広場」を整備し、金沢城公園、兼六園、中央公園、金沢21世紀美術館をつなぐ新しい金沢市街地へのアクセス拠点(ハブ)を実現させている。 旧県庁舎は南側ファサードの棟を改修し、北側に金沢城公園に対峙するようにガラス主体の現代建築の増築部分が接続している。増築部分は三層吹き抜けのイベントホール、カフェを内包し、横幅80mに及ぶ全面ガラス張りからは旧県庁のときには見ることが出来なかった雄大な金沢城の石垣のパノラマ風景を出現させている。この北側のランドスケープを造景するために「いもり堀」を復元し、芝生広場に適度な地形の起伏を施し迎賓館から往来の車影を見えなくするなど細やかな演出が功を奏し、金沢の新名所を創り出すことに成功している。 保存部分は大正期の建築家・矢橋賢吉の設計によるもので、関東大震災前の耐震設計が導入されていないRC構造物として希少ではある。そのため平成の改修工事では免震レトロフィットにより基礎部に免震層を設け、スターラップ筋および中央部分に上端筋がない大梁にはオリジナルの寸法を最大限守るためにも炭素繊維シートでせん断補強を行い、また無筋部分には炭素繊維強化プラスチックによる補強を行うなど先端技術を駆使した高水準なリノベーションは評価が高い。 歴史的建物の修復にとどまらず、都心の回遊性による新しい賑わい創出にも貢献するともに江戸時代から平成に至る建築ストックを活かしたまちづくりの今後のモデルとしても評価の高い作品である。 |
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(熊澤 栄二) | |||||||||||||||||||||
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