所在地 :岐阜県瑞穂市本田字丸竹2050−1 |
1階がデイサービス用スペース、2階が9名の介護ユニットが2つ確保されているグループホームという構成で完成した高齢者向け福祉施設である。 3300mmの基本グリッドの中で必要諸室が過不足なく確保され、またスケール感のよい空間が生まれている。1階の外周部分は、50本の鉄骨柱で垂直荷重を受けることで外壁面を一歩引き込み、外部に対して開放的な構えがつくられている。内部から外へ目を向けると、周辺のまちの様子や田園風景が目に入ってくる。来訪者にとっても安心感のある空間であろう。 中央の階段を上がって2階に向かうと、1階とは大きく異なる空間が目の前に広がる。外周に2ユニット分の個室18室が配置され、その間にサロンや洗面が用意されている。中央にはルームと呼ばれるリビングが3300mmグリットを3分割した1100mmモジュールに従って8つセットされているが、これらは天井から下がる垂れ壁(壁下端での高さは1800mm)によって空間的に分割されている。それぞれのルームの平面形や広さは画一的でなく、上部にはトップライトが設置され、様々な方向から光が下りてくる。垂れ壁下端で1800mmというクリアランスは数字として見ると低く感じるが、基本的に入居者は椅子もしくは畳の間に座っていることを考えると、大きな支障となるようには感じない。入居者は8つリビングの中から、その時々の居場所を選択できる。よって、個室とルームがあまりダイレクトにつながらないように、個室からルームや廊下部分への出方は一つ一つ吟味されている。 設計者はクライアントである社会福祉法人とユニットケアによる設計の模索を重ねてきている。この施設の設計においても、クライアントとの信頼関係をベースにした意欲的、かつ魅力的な提案が実現している点を高く評価したい。今後も介護者の負荷の低減だけでなく、入居者や来訪者の生活の質の向上に向けて、設計者とクライアントの協働作業による提案と検証が継続されることを期待したい。 |
|||||||||||||||||||||
(小松 尚) | |||||||||||||||||||||
|
|