所在地 :静岡県三島市芝本町12−3 |
JR三島駅から楽寿園を過ぎ南へ下る昔からの商店街に、木造2階建ての「旧三島信用金庫本店」が建っていた。シンメトリーでシンボリックな中央に塔を配した古典的なファサードは昭和11年竣工以来長年市民に親しまれてきた。しかしながら老朽化と耐震的にも補強では復旧不可能と判断される建物になっていた。そして今回、三島信用金庫創立100年の記念事業として建て替えられることになった。旧館のファサードは銀行の顔として三島信用金庫のイメージそのものであり、地域のランドマークでもあった。そこで「記憶の継承」をもとに旧館のデザインを生かしながら、更にこの先100年後も受け継がれる信用金庫の姿を目指すことになる。旧館は解体された後、一部稲田石はアプローチの階段のステップに、手摺の大理石は室内共用部のニッチなどに生かされ新たな命を与えられている。機能的には銀行として、将来への多様化するサービスに対応できるスペースを確保しながら、市民と地元の作家に利用されるギャラリーを4階に設けている。地域の文化振興への銀行の積極的な意思が見られて好感が持てた。更に一階正面のエントランスホールは、銀行ロビーから独立し、市民に開放されて、演奏会、個展などのイベントも開催される平面になっている。その他ソーラーパネル、LED照明等省エネ対策。街並みへの演出として、時間経過を告げる3段階のLED照明のライトアップなどのアイデアも取り入れている。全体を通してその中でもファサードの再構築には苦労が感じられ、既存のデザインの丁寧な分析からスタートしている。古典的な意匠をトスカナ様式に見出し、銀行の主な機能を3層にまとめ、旧館より更に磨き上げたプロポーションに仕上げている。創立100年の記念事業のテーマ「夢をかたちに」が現実となったこの建築は、本店機能ばかりでなく、市民へのサービス、街の記憶まで継承発展して、未来に向けて市民に愛され、大事に利用される予感のする建築である。 | |||||||||||||||||||||
(清 峰芳) | |||||||||||||||||||||
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