所在地 :名古屋市守山区 |
名古屋市の金城学院大学から北西に続く緑豊かな閑静な住宅街の丘陵地に建てられている。玄関を含む生活領域である二階部分の四面は半透明なガラスで囲繞されており、一階部分の木造デッキ空間との対比は鮮やかで、明るく軽快な意匠が印象的である。この半透明なガラス面はその全体がルーバー窓として風や光そして熱を選択的に内部空間に取り込む環境調整の機能を有する皮膜の如き役割を担う。その内部には、ルーバー窓からおよそ1m距離をおいて重厚なRC造の壁体が隙間を保ちながら室内の壁を構成し、その間には竪桟の小気味よいリズム刻む障子が設けられている。 ガラスのルーバー窓と障子のつくりだす空気層は厳しい寒さから室内空間の温熱環境を調整するとともに中間期には風の通り道となる。天井スラブには地下50m以深から汲み上げられた井戸水が通され、床スラブには床冷暖房用の冷温水が通されることで居室上下を区画する構造体に蓄熱した輻射熱により年間を通して安定した温熱環境を室内空間に提供している。さらに風の通り道である空気層は冬の厳しい期間には直射日光からのダイレクトゲインによりRC壁体に蓄熱され、壁面からも輻射熱による穏やかな熱環境の調整も十分期待できる。 これら居室空間を区画する壁・床・壁面はそれ全体で機能する優れたパッシブ型の温熱環境の調整装置でありながら所謂、高気密高断熱住宅のような閉鎖的な空間に堕するのではなく、寧ろ自然の四季の移ろいに応じて呼吸するかのうように(人の手をかりてであるが)周囲の環境に開き順応する有機的な建築である。また建物を囲繞するルーバーガラスは居室から眺めると素材のもつ冷たさとは打って変わり、全体が淡く白く光を放ち、時々刻々と移りゆく風や日光の移りゆきにあわせて周囲の木影の濃淡を映し出し、一服の墨絵のごとき風景画を現象させて厭くことがない。まさに日本住宅のエッセンスを現代的に翻訳したような建物と言えよう。 |
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(熊澤 栄二) | |||||||||||||||||||||
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