所在地 :岐阜県下呂市森2270−3 |
下呂市の体育館、劇場、そして市民利用施設の複合施設である。敷地はゆるやかに傾斜している地形で、それをうまく利用した断面構成と平面構成をもつ。大きく劇場ブロックと体育館ブロックの間に市民交流スペースを段状に配するというもので、棚田のイメージであると説明されている。その中央に段状に巧みに小さな諸室が配され、空間的に変化がつけられている。全体に人の流れがスムーズである構成が確認され、またそれぞれの空間が広がりと明るさ、楽しさ等が連続的に展開されているところは高く評価できる。周辺に水面を配した外部環境の構成も巧みで、駐車場前の水面は結界を形づくっている。現地審査時はちょうど台風のため水はなかったが、その計画の卓越さを容易に想像できた。比較的厳しいコストの中で材料の選択も適切である。 谷側、山側ともに視線が大きく抜け、周辺の山々の美しい景観が楽しめるのが特長であるが、残念なことに山側には県立病院がつくられる予定で、比較的高いコンクリート擁壁が視界を遮る工事が進行中であった。行政の縦割りによる空間的な相互調整が行われない日本の日常的な風景であるが、せっかくの美しい景観への視線を台無しにしている。これは本審査には関係のないことであり、設計者にとって誠に気の毒なことであるが、本来的にはここを利用する、市民、県民にとっても大きな景観的損失だといわざるを得ない。 写真ではフラットな大きな屋根が駐車場を覆いかぶさるようにあるのが、下呂としての地域環境としてどうか心配していたが、現地審査ではその立地している位置がかなり市街地より離れていることや、内部からの景観の見えという点からも、大きな屋根は十分に説得力のある形態であることが理解できた。総合的にとても高いレベルの環境形成に成功している。中部建築賞として評価される作品である。 |
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(仙田 満) | |||||||||||||||||||||
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