所在地 : 愛知県海部郡飛島村大字松之郷三丁目21 |
広大なコンテナ埠頭を擁する財源豊かな村、飛島村唯一の公立小中一貫教育校である。別々の敷地にあった二校を統合し、役場や公共施設の集中するシビックセンター地区に移転・新築することによって生まれた。 小中学校を一貫させ、9学年を4+3+2の3段階に区分する。特別教室は小学校分と中学校分、すべて二室ずつになる。だから、合唱・合奏のための部屋と、鑑賞のための部屋というふうに特化できる。理科室も、家庭科室も、保健室さえも同様。こうして実際のアクティビティにふさわしい空間が次々に生み出される。一方で節約すべき所はきちんと節約する。例えばこの学校にはプールはない。プールの授業も卒業式も、隣接する公共施設でやるそうだ。 クラスルームはあえてすべて同型。学年あたり二つの教室とオープンスペースが一体になったクラスターである。自由度が高いオープン形式だから、家具のしつらえなどだけで学年差に十分対応できるという読みなのだろう。ハイサイドライトから自然光が導かれ、層状に挿入された中庭のながめが窓の外に広がる。 どの空間にもたっぷりとした余裕がある。階段や廊下などの巾は広く、要所に溜まりを配しながら、建物全体をゆったりと回遊する。その幹に当たるところに吹抜けの図書室・リソースセンター。本棚が階段に沿って上昇し、学年とともに難しくなっていく本が、その高さに応じて配架される。その隣、校舎中央には、学校全員が集まれるホール。給食調理室が接し、昼食の場としても使われる。体格の違いに応じたカウンターが並ぶカフェテリア形式だ。 これらすべてが縦横8.1mスパンの均質な格子にあてはめられている。架構の単純さを強く希求した証拠だろう。個々の部屋が、中心−周縁、序列−並列といった整った図式にまとめられていることも特筆に値する。多様でありながら単純、フランクでありながらフォーマルな空間の采配が、きちんと追求された作品である。 |
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(富岡義人) | |||||||||||||||||||||
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