所在地 : 愛知県岡崎市 |
平成の始めに土地区画整理事業が完了して、住宅地化が進んだ比較的新しい市街地にこの住宅は建っている。「モンブラン」の字義通り「白い山」のような家である。閑静な住宅地にあって、違和感なく周辺に溶け込みながらも、シンボル的な存在感をアピールしているという、アンビバレントな感覚をもたらす。 この住宅は三方から住宅やアパートが迫りくるなかで、一方で個人住宅としてプライバシーを確保しながら、他方で小さな美容室を併設していることから、外部からアプローチしやすい開放性も担保されなければならない課題を持っていた。それらの課題を解決する、市街地でのポジティブな住まい方のモデルがここに提示されている。 2階建ての住宅を覆うように、全面道路に対して切妻風に白い大型傾斜屋根をかぶせ、隣接からの視線を遮っている。しかし、それだけでは住まい手の居住環境はよくならない。視線を外したところに大型傾斜屋根に大枠の開口部を5ヶ所設けることによって、各部屋への採光や風通し、景色を確保している。さらにその屋根によって屋上、2階テラス、1階前庭アルコーブの3つの半外部空間を設けることが可能となった。多種多様な居場所を提供し、「豊かな生活」の実現に成功している。 屋上にあがる。そこには大きな開口部が3ヶ所あり、大屋根に包み込まれながらも、開放感がある。雨も降れば風も吹く、それを体感できるし、屋根の下にもぐれば、それを避けることもできる。南西の開口部からは家並みが目に入り、遠方には緑あふれる山並みも見える。2階テラスや1階アルコーブにはテーブルとイスが置かれ、くつろぎの時間を提供する。 モンブランハウスの特徴である、この白い大型傾斜屋根に是非名前をつけてほしいものだ。 建物の妻側上部に美容室の看板が、大型ではあるが、さりげなく掲げられている。小さな美容室なのだが、居心地のいい空間である。住まい手の気持ちをうまく表現した住宅である。 |
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(井澤知旦) | |||||||||||||||||||||
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